シチリア地方料理って?

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地中海の十字路シチリア島。


cucina_siciliana_map.jpg地中海の真ん中に位置することから1861年にイタリア王国に編入されるまで、ギリシャ人、ローマ人、アラブ人、ノルマン人、スペイン人等様々な民族に支配された歴史があり、それらがミックスされた個性的な文化を形成してきました。たとえばキリスト教の教会のすぐ隣にイスラム教のモスクが並ぶ景色。これはかつて支配していたアラブ人の文化を継承、融合し現代まで受け継いできたシチリア独自の文化のひとつ。海に囲まれていることから魚介を使った料理ばかりかと思われますが、標高約3,300mのエトナ山周辺では紀元前からワイン作りが行われ、肥沃な火山灰土壌からは近年高評価のワインが生まれています。また内陸部では牧畜酪農が盛んで肉料理もバラエティに富んでいます。一つの島で様々な侵略の歴史を経てきたからこその、親しみやすい素朴な食文化が育まれてきた土地なのです。

 

日本人に馴染みのある食材は枚挙に暇がありませんが、まぐろ、柑橘類、桃、なす、アスパラガス、アーモンド、香辛料そして乾燥パスタは9世紀から11世紀にシチリアを支配したアラブ人の時代から日々の食卓に取り入れられるようになりました。またピスタチオ、サボテンの実、ドライトマト、塩、ケイパー、マグロのからすみ等は温暖な地中海性気候で生産されるシチリア独自の食材であり、それらとの組み合わせの妙をお楽しみください。 

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硬質小麦のパン
 

硬質小麦の栽培に適し「ローマ帝国の穀物倉庫」と呼ばれていたシチリア。そのパンは黄色がかっていてアラブ人が持ち込んだゴマをかけて焼きます。また一般的にチーズが手に入らなかった時代に、パン粉をカリカリに焼いてパスタに振りかけチーズの代用とするなどパン粉を多用。粉や卵は使用せずにパン粉のみつけて焼く仔牛やメカジキのカツレツ等も独特の食べ方です。イワシのベッカフィーコ(パン粉焼き)は日本でも定番。

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レモン
 

「レモンで火を入れる」という表現があります。レモンを使うことで白っぽくなる調理技法のことで、海老や魚を生に近い状態で食べます。魚介の生食文化も根付いています。

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フィノキエット

野生種のウイキョウ。ウイキョウは日本では平安時代に渡来しているといわれ長野県でも多く栽培されているセリ科の香草。リキュールや薬用にも利用され、馴染みがあるものの中に仁丹の成分としての利用もあり日本人も馴染みのある食材です。現代流通している品種との違いは葉柄の基部が球形にならないこととその香り。かなり強めの清涼感ある香りのなかにほんのり甘さも感じられます。

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アーモンド

ビアンコマンジャーレ(ミルクのババロア)、トローネ(ナッツやドライフルーツのヌガー)、フルッタ・ディ・マルトラーナ(マジパンを成形した練り菓子)、グラニータ・ディ・マンドルレ(アーモンドのグラニテ)、ラッテ・ディ・マンドルレ(アーモンドドリンク)。どれもアーモンドが主役のお菓子。島の南東部にあるノートが産地として有名です。ノートの街は17世紀に起きた大地震により崩壊するも、その後海側に移りバッロク様式の美しい街を作り上げ、現代では世界遺産に登録されています。

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ラグザーノチーズ

モディカ牛という赤い牛の乳から作られる1本20kg近い、長方形のセミハードチーズ。アメリカに渡った移民のために、船で輸出するのに積みやすいようにこの形になったとか。信州の氷餅のように熟成させる時に真ん中を麦藁で縛り吊るしておきます。モッツアレラチーズのように出来立てのチーズを湯の中で成形して作られるので、ラグザーノチーズも加熱するとお餅のようにに伸びます。鉄板で焼いて野菜と共に食べるのがシェフが学んだラグーサ地域の食べ方。この味わいに親しむとパルミジャーノチーズでは物足りなくなるそう! 

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